豊中ロータリークラブ公開フォーラム「みんなでささえる認知症」清原久和 畑田耕一

豊中ロータリークラブ公開フォーラム「みんなでささえる認知症」

豊中ロータリークラブ  清原久和 畑田耕一

 

豊中ロータリークラブ主催の公開フォーラム「みんなでささえる認知症」が、国際ロータリー2660地区の地区補助金による行事として、4月25日14:00~16:00豊中市ゆやホールで、豊中市・市立豊中病院後援のもとに開催された。大阪大学大学院医学研究科情報統合医学講座講師数井裕光氏の「認知症の基礎知識」と題する講演では、同氏が「市民の皆さんに持っておいて欲しいと思われる認知症の基本的な知識」が分かり易く解説され、参加者全員が熱心に聞き入っていた。数井氏は、話の最後で、厚生省の認知症対策総合研究事業の一つのプロジェクトとして行っている「BPSDの予防法と発現機序に基づいた治療法・対応法の開発研究」の内容をかなり詳しく紹介された。認知症患者には、物忘れや判断力の低下など脳機能の低下を直接示す症状と、それに伴って現れる行動面・精神面の症状とが現れる。BPSDはBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略号で、上記の脳機能の低下に伴って現れる暴力、暴言、徘徊、拒絶、不潔行為などの行動的症状と抑うつ、不安、幻覚、妄想、睡眠障害などの心理的症状 のことである。このプロジェクトの話は、筆者らには、一般参加者の方には少し馴染みにくい話かなと思えたが、「あのプロジェクトの話は大変興味深く聞いた。ただ、あれだけ多くの項目について、地域や年代のことも考慮しながら、統計的解析に耐え得るデータを集めることが出来るのだろうか」と心配していただいている方が居られた。一般の方がここまで深く話を聞いていただいたことに、あらためて敬意を表するとともに嬉しい気持ちで一杯である。

会の後半では、認知症患者やその家族、地域社会や行政が互いにどのように関わり合い協力して、認知症に対応していくべきかを考えるパネル討論形式の座談会が行われた。パネラーは市立豊中病院認知症認定看護師大久保和実氏、市立豊中病院医療ソーシャルワーカー(MSW)柏木秀紀氏、豊中市中央地域包括支援センター認知症地域支援推進員国定須美子氏の認知症治療の現場で働く3人と数井裕光氏の4人で、筆者の一人市立豊中病院前総長の清原久和の司会で、認知症の方をどのように理解するか、日常生活での工夫、公的制度の活用など予め用意された15の項目について活発な話し合いが行われた。たとえば認知症の方が何度も同じことを聞いておられるのはご自分の記憶を何度も確認するためである、というようなことである。やや学術講演調であった前半の講演に比べて、柔らかく和やかな雰囲気のパネル討論となり、参加者も何か自分に役に立つ話があるかなと、耳を澄ませて聞いておられる様子が窺えた。「時間の問題はあったにせよ、一般論だけでなくもう少し具体的で詳細な話が聞きたかった」という意見があった。もう少し時間を延ばして、会場からの質問を受け付ければ、このように熱心でロータリー活動にも理解を示しておられる方に、もっと満足して頂けたと思う。

認知症の夫を介護しているという女性が、「何となくもやもやしていた部分が、今日のお話しを聞いてスキットしました。これで介護が楽になるわけではないが、今晩から、また頑張ります」と言って帰って行かれた。嬉しい一言であった。

認知症患者の介護にかかわりを持っておられる方とともに、「自分が認知症ではないかという疑問があって、それを確かめに来た」という方もかなりおられた。その中で、自分は少なくとも今は認知症ではないとはっきり分かった、という人はそんなに多くはなかった。「判断の筋道は話を聞いてよりよく理解できたが、自分が認知症か否かの判断は依然として出来なかった」という人の方が多いようであった。「そういう時は気軽に医者に相談して下さい」というのが今日の演者たちの言いたかったことなのであろう。

「演者が時間を気にしてかなり早口でしゃべられたので、聞きながらメモを取るのが難しかったと」、「略号を使って話をする時は、予めその内容をよく説明して欲しい」という意見はかなり多かった。このような一般市民を対象とする集まりでは、主催者側がよく留意すべきことである。

今回の公開医学フォーラムは、一般の参加者が50名強、その半数を超えるロータリアンとその家族が参加し、地区補助金を活用してクラブが一体となり総力を挙げての催しであった。豊中ロータリークラブとしては初めての試みであったが、上に述べたように、一般参加者から高い評価と温かいご指導・ご助言をいただき、かなりの成果を挙げ得たことは間違いないと思う。国際ロータリーをはじめフォーラムの開催をご指導・ご支援いただいたすべての皆様方に心より御礼申し上げて稿を終える。