???2014年4月23日市立西宮高校理数科1年生に物質の状態・性質・機能を分子の立場から考える授業をしました。お話しは、物質を作っている目に見えない小さな粒子である分子の概念から始めて、分子の大きさ(分子量)が大きくなるにつれて、それが形作っている物質の状態・性質はどう変わるのかを、炭素と水素から出来ている分子を例としてメタンから流動パラフィン、固形パラフィン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの実物を見せながら説明し、分子量が大きくなると物質の強度が大きくなることと、その理由は長い分子の絡み合いによるものであることを生徒たちに納得してもらいました。超高分子ポリエチレンで作ったポリエチレンの紐の引張り強さには皆目を見張りました。
このようにして分子の概念をきっちりと説明し、物質は多くの分子が集まって出来ていることを話した上で、50mlの水と50mlのエタノールを混ぜると100mlにはならず96mlになることを実験で確かめさせると、生徒はただ驚くだけではなく、異分子の混合はどのように起こっているのかを自分で考えることが出来るようになります。中学時代に習った密度の大小が分子の質量だけではなく、その集まり方にも影響されていることも自分で容易に思いつきます。
同じ水の分子で出来ている物質でも気体の水蒸気、液体の水、固体の氷の三つの状態があります。この3態は水分子の集まり方だけでなく分子の運動の仕方の影響も受けています。さらに、水の3態の性質変化が水分子の運動性だけではなく水分子の形、すなわち二つの水素原子が一つの酸素原子に結合した折れ曲がり構造の分子であることも教えれば、固体の氷が液体の水に浮くこと、すなわち水の密度が4℃で最高になり、固体の氷が液体の水に浮く理由も生徒から引き出すことが出来ました。ここで、水が氷になる変化は「温度が下がって水の運動性が落ちて起こる」のではなくて、「水の運動性が落ちたから温度が下がる」のだという温度の本質を教えることを話すのを忘れないようにしております。
このようにして分子の本質を生徒に質問して意見を聞き、それに対してこちらも意見を言ったり別の質問をしたりという、所謂「双方向的」に授業を行うと、生徒は次第に分子のことだけではなく、物事の本質を理解しようと努める習慣を身に付けていくのが分かります。2時間の間に生徒が随分変わるのです。このような習慣を身に付けた生徒に対して、ゴムの性質は、ゴム分子の移動に関わる運動性ではなく、ゴムという特殊な構造の高分子の局所の運動性によって決まっていることを生徒に理解してもらうのはそんなに難しいことではなくなります。高温で柔らかくなったポリマーをある形にしてそのままの形で冷やしたものを、再び高温にすると最初の形に戻るという形状記憶ポリマーの実験も単に面白いだけの手品ではなくなるし、錘をつるしたゴム紐に熱湯をかけると伸びるか縮むかという難しい質問にもかなりの生徒が正しい答えを想定できて、その後の実験で自分の考えの正しさを感動と喜びをもって確かめることが出来ました。このような授業では生徒は何を聞いてもすぐに応えてくれます。それが私にも楽しいのです。私にとっても感動と喜びに満ちた2時間でした。