2017 年はロータリー財団設立100 周年であり、と同時に、日本独自のロータリー事業-米山記念奨学公益財団の設立50 周年でもあります。世界各国の留学生を支援するロータリー米山記念奨学事業について話をさせていただきたいと存じます。
「飲水思源・原点回帰」
「米山」の名称は、もちろん日本ロータリーの父である米山梅吉氏に由来するものです。日本のロータリーは、第2 次世界大戦中に国際ロータリーから脱退しました。戦後の1949 年に復帰しましたが、残念ながら、米山梅吉氏はそれを待たずに、この世を去りました。1952-53 年度、東京RCの会長 古沢丈作さんは、米山梅吉の功績を記念したく、「米山基金」を提案しました。
「日本ロータリアンの夢」
1952 年、戦後10 年も経たず、日本中はまだ物資が乏しく、国を再建している最中です。余裕がないにもかかわらず、なぜ、自分たちの国の学生ではなく、外国人留学生を支援するのでしょうか。そこにあるのは実は、日本ロータリアンの「平和」への強い信念でした。「将来の日本の生きる道は平和しかない。その平和日本を世界に理解させるためには、アジアの国々から一人でも多くの留学生を日本に迎え入れて、平和日本を肌で感じてもらうしかない。それこそ、日本のロータリーに最もふさわしい国際奉仕事業ではないだろうか」と、当時のロータリアンたちの強い願いがあったのです。
「徳不孤、必有隣」
また中国の諺ですが、「徳は弧ならず、必ず隣があり」。徳積みの善行を行えば、必ずそれを認めて賛同する人が出てくるという意味で、東京RC からスタートした「米山基金」は、わずか5 年間で「ロータリー米山記念奨学委員会」が結成され、日本全国のロータリークラブの共同事業へと発展しました。その後、「月に煙草一箱を節約して」の合言葉によって、会員1 名当たり月額50 円の寄付金を募る運動が始まりました。月にタバコ一箱の事業は、現在、60 年も歩み、国際ロータリーにも認証された日本ロータリーの大事業となっています。
「民間最大の国際奨学事業」
日本ロータリーの大事業のみならず、外国人留学生を対象とした民間の奨学金では、国内最大規模となっています。2017 学年度の奨学生数は793 人、これまでに支援した奨学生数は累計で約2 万人となり、その出身国は、世界125の国と地域に及ぶこととなっています。
「人づくりの事業」
ロータリーの品格と高潔さが一貫し、米山記念奨学事業も、将来母国と日本との架け橋となって国際社会で活躍する優秀な留学生を支援しています。年間750 名の採用ですが、日本全国208,379 人留学生(平成27 年度)の中から選ぶもので、極めてハドルの高い奨学金なのです。千人当たり、4 人しか米山奨学生になれない という名門中の名門なのです。
実際、この出身校リスト及び博士号の取得者数を御覧いただきますと、お分かりになると思いますが、米山は、優秀な留学生を更に成長させる「人づくり」の事業なのです。
「親日の輪を世界中で広げる」
この「人づくり」は、米山記念奨学事業で最も重要視されている「交流」を通じて、また最大な特徴でもある「カウンセラー制度」の元に、実現されています。その結果として、真に日本を理解し、日本を愛する親日派が世界中育ちました。米山奨学期間が終わった後も、学友会という形で、学友同士の友情を深め、ロータリーとの接点を持ち続けています。現在、日本国内に33、海外には台湾・韓国・中国・タイ・ネパール・モンゴルと、9 つの学友会があります。「ロータリアンになる」米山と出会って、ロータリーという組織を知って、憧れて、更に組織の一員となった学友が220 名います。そのうち、約100 名は日本のロータリークラブに所属しています。私もその中の一員です。更に、米山学友を中心に5 つのクラブも発足しました。最初RI に加盟承認された「台北東海ロータリークラブ」は、なんと日本語を公用語にしています。会員の心の中、日本を故郷だと見なしていることですね。
「米山奨学事業に寄付」
米山奨学金を頂き、それをフールに活かし、それぞれの分野で成長し、成功した学友達は、また米山に寄付し、後輩達の奨学事業に寄与しています。学友姫軍さんは中国から2007 年より毎年50 万円、張虞安さんは、アメリカから毎年1,000 ドル、そして日本国籍に帰化した清野さんは、2009 年から毎月1 万円と、継続的に米山に寄付しています。学友による米山記念奨学事業への寄付金額は、すでに3,000 万円を超えています。
「滴水之恩、湧泉相報」
また中国の諺ですが、「滴水之恩、湧泉相報」しずくのような恩恵を受け、湧き泉の如く恩返しすべし。貧乏の時いただいた資金を、富を築いた後に返す。しかし、それは単なるお金だけではありません。お金そのものより遥かに深遠な意味を持っています。それは、ロータリーの奉仕精神であり、平和と友愛の聖火リレーそのものなのです。
「超我の奉仕・生涯米山功労者」
私も素晴らしい先輩たちに見習い、一昨年より毎年米山功労者になると決めました。そして、 旅先のインド、ヨルダン、イスラエル、キプロス・・・至ったところのロータリークラブを訪問し、日本独自の米山奨学事業の素晴らしさをPR させていただいております。
「End Polio Now」
2010 年に日本初のポリオ撲滅チームにも参加させていただき、全国から集まったロータリアン有志者と一緒にインドに行き、ポリオのワクチン投与をしてきました。
「自己紹介」
さて、ここまでいろんな話をさせていただきましたが、では、私ってどんな人でしょうか。自己紹介が遅れて大変失礼いたします。私は、中国天津の出身で、21 年前初来日しました。
1996 年9 月~ 1998 年3 月 愛知淑徳大学留学生別科
1998 年4 月~ 2002 年3 月 名古屋大学教育学部
2002 年4 月~ 2008 年3 月 名古屋大学大学院教育発達科学研究科 心理学博士 臨床心理士
2008 年4 月~ 2016 年7 月 学校法人セムイ学園 専任講師
その後、ジブラルタ生命保険株式会社に転職し、現在に至ります。
2005 年4 月~ 2007 年3 月 米山奨学生 名古屋中RC
2014 年5 月~現在 愛知ロータリーEクラブに入会
2015 年7 月~ 2017 年6 月 第2 代目よねやま親善大使
そして、私の専門は臨床心理学です。「臨床心理士」という資格があり、心理カウンセリング、心理治療を中心にした臨床実践となります。私は、2002 年名古屋大学の修士課程に入ってから、心理発達相談室、中学校、精神病院など臨床の場で心理検査・治療の活動に携わってきております。児童の自閉症など発達障害;学生の不登校・引きこもり;成人の不安障害、うつ病、アルコール依存など、各年齢層で、多岐を渡ってメンタルヘルスの問題に取り組んできました。また、欧米人を対象に、英語のカウンセリング・サービスも提供しています。
仕事ですが、心理学の専門教育を始め、中国における歯科技工と歯科医療の教育、人体解剖の実習、医学英語などに医学や歯学の教育にも携わり、更に、海外のいくつかの国々から留学生を受け入れたり、学術交流を行うなど国際業務も展開し、前職である医療系専門学校で8 年間勤めました。人生により多くの経験をしたいと思い、昨年の8 月にジブラルタ生命保険株式会社に転職し、現在営業所長をしております。
「Long long time ago」
今、舞台に立って堂々と話している自分が居ます。しかし、21 年前、来日当初、私は全く日本語が話せませんでした。今でも鮮明に覚えていますが、当時は渡航費を抑えるため、飛行機ではなく、船で日本に渡ってきて、船酔いで死ぬほどの思いをしながら日本にやって参りました。21 前の中国、今の爆買の中国と全く違い、まだまだ貧乏でした。両親1 ヶ月の収入は3 万円で、ほぼ家族の全財産をかけて、私1 年間の学費と生活費、150 万円を捻出してくれたのです。当時の私は、殆どの留学生と同様に、社会の最低層に居ました。勉学生活を支えるため、理容室の掃除、新聞配達、洗い場、そしてスロット屋や雀荘など一生懸命アルバイトをし、学費をコツコツ貯めて、頑張っていました。例えば、新聞配達のアルバイトで、初めてバイクを乗っていました。乗った初日で転んで怪我して、未だにも消えない傷跡が残っています。例えば、中国で親に甘やかされて、ほとんどキッチンに入ったことがなく、家事もしたことがほとんどなかったのですが、日本に来て、初めて山積みのお皿を洗っていました。例えば、日本に来る前、レストランに行っても、常に顧客だったのですが、日本に来て、初めてレストランの中、立たされ、「いらっしゃいませ」と言わせられた。しかし、恥ずかしくて言えず、笑顔も作れず、涙さえ流しました。若くて異国での生活は、実は大変でした。様々な悩み、戸惑い、躓き、苦しみ・・・ それは、全て味わっていました。あまりにも苦しんだ結果、今の専攻にたどり着いた。心理学を勉強すれば、少しでも自分の精神的な苦しみが軽減できるのではないかと、極素朴な動機でした。
「ロータリー米山と出会い」
でもでも、ラッキーな私!ここでロータリーという組織に出会いました。いいえ、ロータリー米山との出会いは、ただの「ラッキー」ではありません。この出会いは、私の人生の前半において、最も幸運な出会いなのです。しかも、私の生涯に影響を与え続けるものであると違いません。
皆様の寄付金は、全て米山記念奨学金として使われ、留学生の手元に届くのです。私も、毎月14 万円をいただきました。もし時給1000 円で換算すれば、毎月140 時間の自由時間が得られるということになります。月140 時間!毎月140 時間も自由時間が得られるのであれば、どれだけ沢山勉強できるのでしょうか!でも、繰り返しですが、米山はただのお金ではありません。それよりも大事なのは、皆様ロータリアンとの出会い、交流自体は、我々留学生に良い人生の模範をしてくださったことです。なるべき人間像、成功した人生とは何か、漠然とした理想像が、皆様によって具現化され、皆様の姿として現れたのです。お蔭様で、私は成長しました。日本語が殆どいらない肉体労働から、翻訳、通訳、そして自分の専門領域の講師まで、知的労働者に成長しました。12 年間も渡る留学生活の頂点に至ったのは、ロータリー米山と出会った御蔭で、皆様のお蔭なのです。これは決して私一人のサクセスストーリではありません。約2 万人の米山奨学生皆がこのようなストーリを語れる、米山だからこそ出来た「人作り」の素晴らしい事業です。
「Thanks to Rotary」
20 万人も超える在日留学生の一人であった私は、海辺の一粒の砂のような存在でした。但し、この砂はとてもラッキーで、美しい貝殻であるロータリークラブ、米山奨学会に出会えたわけです。そこで栄養を頂き、磨かれて洗練され、真珠まできれいに変身し、成長して行きます。
「報恩・奉仕・繁栄」
いろいろ話をさせていただき、一言でまとめれば、「報恩・奉仕・繁栄」ということです。報恩、奉仕、繁栄。恩を知り、常に感謝の気持ちを持って、人々のため、社会のために超我の奉仕を行い、社会の繁栄と世界の平和を目指し実現していく。
「人間の生きる目的」
ロータリーと出会ってから、私は人間の生きる目的を見出しました。2つしかありません。
1.自ら成長すること
2.人々のために尽くすこと
ロータリーは、この二つの目的の集大成であります。
「This is Rotary!」
これがロータリー!人間として成長しつづける舞台なのです。この素晴らしい舞台に立たせていただいているのは、全て皆様のお蔭です。皆様との出会いは、私の人生の宝です。心より深く感謝申し上げます。御清聴、どうもありがとうございました。