今年度の方針
1 はじめに
ポリオ撲滅はRIの最優先事項です。1980年代後半、ポリオは世界125カ国の国々で35万もの人が発症していました。その後30年余の努力の甲斐もあり、2017年の発症数は3カ国で22件にまで減りました。大きな成果を得たと言っても、まだゼロではありません。ここでポリオを撲滅までもっていかなければ、振り出しにもどり、再び何十万もの人が苦しむことになるかもしれません。撲滅のためには、毎年4億5千万人の子供にワクチンを投与しなければなりません。中には、内戦やテロ、政情不安な国の子供達も含まれます。ポリオ撲滅のための資金が15億ドル不足していると言われていましたが、RIが3年間で1億5千万ドルを拠出し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、各国政府、その他各種団体の支援を得た結果、その不足分15万ドルの手配も目途が立ちそうな状況です。
30年前、全世界で毎日1000人もの子供が発症したポリオ、そのポリオが地球上から完全に無くなる歴史的な日まで、我々ロータリアンは立ち止まるわけにはいきません。
2 ロータリーの目的と行動指針
このポリオ撲滅の活動は、1979年にフィリピンの地区が3H補助金を活用して始まりました。この一地区の活動が世界的な活動に発展することができたのは、何故でしょうか。ここで、ロータリーの目的、ビジョン、RI戦略計画等、ロータリアンの指針となるべきものを整理・確認したいと思います。
先ずは、ロータリーの目的です。
「ロータリーの目的は、意義ある事業の基礎として奉仕の理念を奨励し、これを育むことにある。具体的には、次の各項を奨励することにある。
- 第1 知り合いを広めることによって奉仕の機会とすること
- 第2 職業上の高い倫理基準を保ち、役立つ仕事はすべて価値あるものと認識し、社会に奉仕する機会としてロータリアン各自の職業を高潔なものにすること
- 第3 ロータリアン一人一人が、個人として、また事業および社会生活において、日々、奉仕の理念を実践すること
- 第4 奉仕の理念で結ばれた職業人が、世界的ネットワークを通じて、国際理解、親善、平和を推進すること(RI定款第4条、標準ロータリークラブ定款第5条)」
次に、昨年7月のRI理事会で採択されたロータリーのビジョンです。
「私たちロータリアンは、世界で、地域社会で、そして自分自身の中で、持続可能な良い変化を生むために、人々が手を取り合って行動する世界を目指しています。」
そして、四つのテストです。
「①真実かどうか、②みんなに公平か、③好意と友情を深めるか、④みんなのためになるかどうか」
また、前記ロータリーのビジョンに基づき、5年程度の中期の計画としてのRI戦略計画があり、その計画の中で、テーマ、ロータリーの使命、中核的価値観、戦略目標が定められています。
- テーマ : 「価値観を行動に」
- ロータリーの使命 : 「職業人と地域社会のリーダーのネットワークを通じて、人々に奉仕し、高潔さを奨励し、世界理解・親睦・平和を推進することです」
- 中核的価値観 : 「親睦・高潔性・多様性・奉仕・リーダーシップ」
- 戦略的目標 : 「クラブのサポートと強化」「人道的奉仕の重点化と増加」「公共イメージと認知度の向上」
ここで注目すべきは、ビジョン、使命から戦略計画のテーマまで「行動」という言葉が何度も繰り返し使われているということです。そして、バリー・ラシン会長の2018-19年度のRIのテーマが「BE THE INSPIRATION インスピレーションになろう」です。この文脈を考えて頂ければ、インスピレーションが閃きや思いつきという意味ではなく、人びとにインスピレーションを与える存在ということが理解頂けると思います。また、私が参加した今年のサンディエゴ国際協議会では、「TRANSFORM(変化)」、「PEOPLE OF ACTION(行動人)」、「CONNECT(接続)」という言葉がよく使われていました。「変えよう」「世界を変える行動人」「力をつなごう」です。
ロータリーの目的以下、我々ロータリアンの指針となるべきものを、以下のように整理することができると思います。
「ロータリーの目的を達成する為に、ロータリーのビジョンを掲げ、中期計画のテーマを価値観を行動として定め、4つのテストを個人の行動規範として、ロータリーの使命を果たすべく中核的価値観を基本理念として行動する事が求められていて、行動のキーワードが「TRANSFORM」、「PEOPLE OF ACTION」、「CONNECT」であり、次年度のテーマは「BE THE INSPIRATION」とする。」
前述のポリオ撲滅の活動も、何人かの行動がロータリアンを、地域の人々を、RIを、WHOを、ユニセフを、ビル&メリンダ・ゲイツ財団をインスパイアし、これら団体や人とCONNECTし、世界をTRANSFORMし、PEOPLE OF ACTIONとして行動した結果なのです。また、資金10億ドルを超えるロータリー財団、既に2万人弱の留学性を支援し、世界9か国で米山学友会が誕生している米山奨学事業も、各クラブが世界で地域社会で行っておられる数々の奉仕プロジェクトもそうです。誰かが考え、誰かが行動し、人々をインスパイアし、つながり、世界を変えていくわけです。その源はインスピレーションであります。インスパイアという言葉は、感動させる、奮い立たせる、鼓舞する、元気づけるなど様々な意味があります。キリスト教では神が人間に生命を与えること、息吹を吹き込むことをインスパイアと言うそうです。人びとに息吹を吹き込んで下さい。生気を与えて下さい。 バリー・ラシン会長のテーマは、『BE THE INSPIRATION インスピレーションになろう』です。
3 戦略的目標について
(1)三つの戦略的目標について、それぞれ以下の点について、私の考えを述べます。
①「クラブのサポート強化」
RIは、全世界のロータリークラブを会員として組織され、ロータリー全体の管理組織です。ガバナーは、RIから地区に派遣され、RI(地区)を管理し、そしてクラブをサポートするために存在します。ガバナー補佐、地区の各委員会は、クラブのサポートのため、その年度、ガバナーから委嘱され、ガバナーを補佐する立場です。
他方、クラブは1962年国際ロータリー基本方針に、「地方的実情においてRIの方針を解釈し実行するにあたり最大の融通性を認めるもの」とされているとおり、ロータリーの目的を無視し、また逸脱しないかぎり、奉仕活動を自主的に行うことが認められています。
したがって、ガバナーは一方的にクラブを指示命令する立場にはありません。その前提にたったうえで、RIビジョンやRI戦略計画があり、18年-19年度のテーマが「BE THE INSPIRATION」です。全世界のロータリークラブは、この方向に向かって行動することになりますが、ガバナーはクラブの主体的な活動をサポートします。
②「人道的奉仕の重点化と増加」
職業奉仕について、職業奉仕がロータリーの根幹かという議論があります。この点については、ロータリーの目的の第2項に「職業上の高い倫理基準を保ち、役立つ仕事はすべて価値あるものと認識し、社会に奉仕する機会としてロータリアン各自の職業を高潔なものにすること」と規定され、四つのテストも不変です。中核的価値の中でも、高潔性と倫理がうたわれています。2013年規定審議会で採択された「ロータリーの樹」のイラストを見ても分かるように、ロータリーの樹が日本のロータリーの根幹を示すものであることに変わりありません。バリー・ラシン会長が掲げるテーマ「BE THE INSPIRATION インスピレーションになろう。」は、まさにこのロータリーの樹がより大きく、より太く、そしてより多くの果実を生み出そうというものです。
③「公共イメージと認知度の向上」
社会奉仕活動を積極的に行うことが素晴らしいことは言うまでもありませんが、表現の仕方によっては、ロータリアン以外の人に誇示しているように受け止められるとすればどうでしょうか。若い人達がロータリーに入りたいと考えるでしょうか。また、各種団体がロータリーとともに奉仕活動をしようと考えるでしょうか。ロータリーの公共イメージの向上は、ロータリーの活動が、人々をインスパイアし、また多くの人とCONNECTすることによって、持続可能な良い変化を生むために、非常に重要なテーマです。
(2)2018年-2019年度:ロータリーの目標は以下のとおりです。
≪優先項目1「クラブのサポートと強化」に関する目標≫
- ⅰ.現会員を維持する
- ⅱ.クラブの会員数を増やす
- ⅲ.新クラブを結成する
- ⅳ.女性会員、40歳未満の会員、ロータリーに入会するローターアクターの数を増やす
≪優先項目2「人道的奉仕の重点化と増加」に関する目標≫
- ⅴ.ポリオ撲滅活動への現金寄付と地区からDDF寄付を増やす
- ⅵ.DDFを利用した地元や海外での地区補助金ならびにグローバル補助金を増やす
- ⅶ.インターアクトとローターアクトが地元のロータリークラブや地域社会と一緒に、奉仕プロジェクト(環境関連のプロジェクトを含む)に参加するよう促す
- ⅷ.年次基金への寄付を増やし、2025年までに20億2500万ドルの恒久基金を達成する
≪優先項目3「公共イメージと認知度の向上」に関する目標≫
- ⅸ.ポリオ撲滅におけるロータリーとロータリアンの役割の周知を図る
- ⅹ.ロータリーへの認識を高め、「世界を変える行動人」キャンペーンを推進する
- ⅺ.ロータリーショーケースとアイデア応援サイトを利用したり、クラブ史を記録することで、ロータリークラブのプロジェクトに対する認識を高める
4 第2660地区の2018-19年度の方針
2018-19年度は、地区のテーマやスローガン、キャッチコピーは作りません。バリー・ラシン会長の『BE THE INSPIRATION インスピレーションになろう』というテーマを受けて、各クラブのテーマや方針を作って下さい。第2660地区の方針は、以下の10項目です。
- ポリオ撲滅への協力をお願いいたします。ポリオ撲滅はRIの最優先事項です。
- ロータリー賞の受賞を目指してください。当地区のクラブのロータリー賞の受賞数が減っていますが、クラブセントラルの活用ができていないことに一因があります。是非ご活用ください。
-
ロータリー財団と米山奨学金への協力をお願いします。
ロータリー財団
年次基金寄付 会員一人当たり150ドル
ポリオ寄付 会員一人当たり 50ドル
恒久基金寄付 ベネファクター1名(1,000ドル)米山財団
会員一人当たり30,000円
- 会員基盤を増強してください
- ロータリーのIT化への協力と公共イメージ向上へのチャレンジをお願いしますITを活用し、自らアクセスし、必要な情報を手に入れなければならない時代になりました。
- 戦略計画を活用し、クラブの中長期ビジョンを策定してください。是非とも各クラブで戦略計画委員会もしくは、その機能を持った委員会を立上げ、クラブの将来のあるべき姿を各クラブの皆様で共有し、その実現に必要な改革、改正を行って頂きたいと思います。
- 新IM内の親睦と情報交換を推進してください。18-19年度より新しいIMがスタートします。このIMの組み換えは、より情報交換を活発にし、親睦を深めつつ切磋琢磨し、ロータリーデーやフレッシュロータリアンセミナー等を通して、各クラブが活性化する事が目的です。
- ハンブルク国際大会、地区大会、地区事業への積極的参加をお願いします。
- 地区ロータリーデーを企画実施する予定です、ご協力お願いします。
- 地区のスリム化、効率化、運営の合理化、財務ルールを徹底します。
5 最後に
国際ロータリー第2660地区とは、81クラブ、3690名 の会員の皆様のことです。主役は地区ではなく、クラブです。
クラブの目的は、標準ロータリークラブの定款の第三条に
「ロータリーの目的の達成を目指し五大奉仕部門に基づいて、成果あふれる奉仕のプロジェクトを実施し ロータリー財団を支援し、クラブレベルを超えてリーダーを育成すること」
と定められています。どうかこの目的に沿って、RI会長の方針をご理解いただき、また共感していただき、クラブの年度方針を立てていただきたいと思います。
国際会議場の会場では、このキャッチフレーズが掲げられていました。
EXCHANGE IDEAS
TAKE ACTION
JOIN LEADERS
皆様、一人一人がリーダーです。是非とも周りのリーダー達とCONNECTしてください。アイデアを交換してください。そして行動してください。
皆様のこれからのご活躍、そして、各クラブが益々魅力ある、個性ある元気なクラブになられますことを祈念しております。